マレーシアの首都クアラルンプールは、人口約180万人(日本の熊本県や三重県とほぼ同じ)、高層ビルが立ち並び、モノレールや地下鉄などの交通インフラも充実したアジアの中でも指折りの近代都市だ。街のシンボルである「ペトロナスツインタワー」をはじめ、市内に多く残る植民地時代の古い建造物など、観光スポットもたくさんある。また、そんなに買い物をする人がたくさんいるのか?と思わず疑問を抱きたくなるほど、市内には多くの大型ショッピングセンターがあり、アジア有数の買い物天国としても知られている。グルメも充実している。マレーシアは主に、マレー系、中華系、インド系の人々が暮らす多民族国家であり、それだけに食べ物の種類も豊富で、安くておいしい屋台料理から高級中華料理まで、さまざまな料理を楽しむことができる。もちろん、宿泊施設もリーズナブルなエコノミークラスのホテルから、ハイアット、シャングリラ、ヒルトン、マンダリンオリエンタルなどの有名高級ホテルまで、豊富に揃っている。
クアラルンプールには、みどころ・ショッピング・グルメ・宿泊といった、観光客を惹きつける要素がしっかりと揃っている。ソウル、台北、香港、バンコクといった、日本人に人気の高いアジアの観光都市に比べると、まだまだ知名度が低いクアラルンプールだが、その魅力はこれらの都市にも引けを取らない。
クアラルンプールへは、マレーシア航空、エアアジア、全日空、日本航空の直行便が成田・羽田・関空から飛んでおり、気軽に行くことができる。
さて、クアラルンプールに行ったら絶対に立ち寄るべきスポットを、何度も現地に足を運んだ筆者が、独断で20個に絞り込みご紹介したいと思う。特に、初めて観光でクアラルンプールを訪れるという方、クアラルンプールに行ってみようかなと思っている方は、是非とも参考にしていただきたい。
1、ペトロナスツインタワー
クアラルンプールのランドマーク「ペトロナスツインタワー」は、1998年に完成した高さ452メートルのツインタワーで、完成当時は世界一の高さだった。現在は、ドバイのバージュハリファが828メートルで断トツのトップだが、ペトロナスツインタワーが最も高い”ツインタワー”であることに変わりはない。なお、タワー1を日本の企業、タワー2を韓国の企業、真ん中のスカイブリッジをフランスの企業が建設した。
ペトロナスツインタワーは、街の様々な場所から見える。どこから見るかによってその表情も変わってくるので、クアラルンプールを訪れたら様々なビュースポットを探してみていただきたい。冒頭の写真は、表玄関の正面から、上の写真はKLCCパークの噴水広場の手前から撮影したものだ。後編で、また違った場所から見たペトロナスツインタワーもご紹介する。
もちろ、ペトロナスツインタワーに登ることもできる。2か所展望台があり、チケットを購入すれば両方見られる。チケットはインターネットでも予約可能だ。上の写真は、41階(高さ170メートル)にある、2つのタワーを結ぶスカイブリッジだ。
こちらは86階(高さ370メートル)にあるオブザベーションデッキ。ペトロナスツインタワーの模型や、クアラルンプールの街全体の地形模型などが展示されている。
窓から外を見ると、すぐ横に片方のタワーの上部が見える。KLタワーが眼下に見える。
2、KLタワー
クアラルンプール市内にあるブキナナスの丘に建つ「KLタワー」は、高さ421メートルの電波塔。261メートルの位置に展望台がある。
KLタワーの展望台は2か所あり、上の写真は室内展望台のオブザベーションデッキ。お土産店などもある。
そしてこちらが屋外展望台のスカイデッキだ。柵は胸ぐらいの高さままでしかなく、ガラスに邪魔されることなく直接景色を見渡せる。特に夜景の場合、ガラスがあると室内の明りが写り込んでしまうので、きれいな写真を撮りたいなら断然スカイデッキがお勧めだ。しかし、入場料はオブザベーションデッキの52リンギットに対しスカイデッキは105リンギット、ほぼ倍額である。なお、オープンデッキのチケットを買えばオブザベーションデッキにも入ることができる。
スカイデッキからの眺め。ペトロナスツインタワーに登るとペトロナスツインタワーは見えない。ガラス越しではなく直に景色を見ることができる点からも、景色を見るなツインタワーよりもこちらの方がお勧めである。
3、マスジットジャメ
奥に見える白くて丸い屋根がイスラム教のモスク「マスジットジャメ」だ。二つの川が合流する砂州のような場所に建っている。実は、ここはとても重要な場所である。「クアラルンプール」とは、「泥の川が交わるところ」という意味だ。そう、ここはクアラルンプール発祥の地である。
マスジットジャメは、1909年に当時のセランゴール州のスルタンが建てたマレーシア最古のモスクである。改装工事を経て2013年に初めて一般公開が始まった。
レンガ造りの美しい建物で、細部にイスラム教独特の意匠が凝らされている。クアラルンプール発祥の地に建つマレーシア最古のモスク、この国の歴史を語る上で重要な場所であり、是非訪れていただきたいスポットだ。
4、独立広場(ムルデカスクエアー)と周辺の歴史的建造物
1957年8月31日に、マレーシアの独立が宣言された重要な場所。国旗が掲げられるポールは99メートルあり世界で最も高い掲揚塔とされる。8.2ヘクタールもある芝の広場で重要な行事やパレードなどがここで行われる。クアラルンプール市民の憩いの場でもある。
独立広場を囲むように、歴史的建造物が残されている。
上の写真は「スルタン・アブドゥル・サマド・ビル」、1897年にイギリスの建築家ノーマンによって建てられ、連邦事務局として使われた建物だ。全長137メートルの長い建物で、中央の時計台が美しい。内部は公開されていない。
「クアラルンプール・シティー・ギャラリー」とアイ・ラブ・KLの看板。記念撮影スポットとして人気がある。シティーギャリーには、クアラルンプールの歴史を語る文物や、巨大な街の地形模型などが展示されている。なお、この建物は1898年に連邦政府の印刷局として建てられものだ。
この建物は、1905年に連邦鉄道本社ビルとして建てられたもので、現在は「国立テキスタイル博物館」として営業しており、マレーシアの様々な民族の衣服や手工芸品などを展示している。
独立広場から、スルタン・アブドゥル・サマド・ビルをあるポイントから眺めると、時計台の後ろにKLタワー、ペトロナスツインタワーが並んで見える。絶好の記念写真スポットだ。
5、国立モスク(マスジットネガラ)
1965年に建設されたマレーシア最大級のモスクで、およそ8000人を収容することができる。青い屋根は18角形の星型になっている。クアラルンプールの多くのイスラム教徒が集う場所だ。
内部の見学も可能だ。入場に際し、女性は全身を覆うローブを借りて着用しなければならない。
独特の模様が施されてたステンドグラスやシャンデリアが美しい礼拝所。信者以外は立ち入ることはできないが、外から見学することは可能だ。
6、イスラム美術館
ブルーのアラベスク模様が印象的な「イスラム美術館」の入口。1998年にオープンしたこの美術館は、地下1階、地上3階、延べ床面積3万平方メートルの巨大な施設で、中東、インド、アジアのイスラム諸国から集めた、イスラム教に関する美術品が数多く展示されている。アラブ料理を楽しめる「ミュージアムカフェ」やお土産店などの施設も入っている。
外観の写真で、上部にちょっとだけ見えている緑色のドーム部分の内側の様子が上の写真だ。下から見上げて撮影したものだ。美しい幾何学模様と淡いブルーを使った装飾がなんとも美しい。
展実ペースはゆったりとしており、とても観賞しやすい。フラッシュの使用は禁止だが、写真撮影はOKだ。
イスラム教関係の美術品は、色使いやデザインが独特で非常に興味深い。日本ではなかなか目にする機会もないので、じっくりと観賞したい。
お土産物も充実している。手軽な価格なものも多く、一味違ったお土産を入手できるので人気が高い。
7、MUD(マッド)
MUD(マッド)とは、クアラルンプールの歴史を題材としたミュージカルである。上の写真がMUD専用の劇場である。この建物も、ムルデカスクエアー周辺の歴史的建造物の1つで、英国植民地時代に市庁舎として使われていたものだ。
劇場の内部もなかなかいい雰囲気だ。
物語は、1857年~80年の錫の採掘ブームの時代から始まる。3人の人物を中心に、人々が大火災や大洪水などの苦難を乗り越えながらクアラルンプールを開拓していく様子が描かれている。
ミュージカルの出演者たち。クアラルンプールに暮らす様々な民族の伝統衣装を着ている。
講演は毎日15時と20時30分の2回、料金は60リンギットだ。
8、王宮(イスタナネガラ)
2011年に完成した新しい王宮、マレーシア国王の公邸である。マレーシアには13の州があり、そのうちスルタン(君主)がいるのは9つの州だ。この9州のスルタンが5年ごとに交代で国王を務める。この新王宮は、第14代の国王から使われている。クアラルンプールからは少し離れた、モントキアラの近くにある。馬に乗った衛兵が門を守っている。
門の中に入ることはできないが、門の前から内部の様子を見ることはできる。
さて、こちらは2011年まで使われていた旧王宮。こちらは、KLセントラル駅から車で5分ほどの場所にある。
現在は、「ロイヤルミュージアム」として一般公開されており、内部を見ることができる。もともとは中国人豪商の邸宅で、第2次大戦中は日本人将校クラブに、大戦後は英国の官舎として利用されていたという歴史ある建物だ。内部には歯医者や映画館まであり、王様の暮らしを垣間見ることができる。入場料は10リンギット。
9、バツーケーブ
ここから2つ、クアラルンプールの郊外のスポットをご紹介する。
クアラルンプールから車で約1時間、KLセントラルから列車でも行くことができる、ヒンズー教の聖地「バツーケーブ」。旅行会社のオプショナルツアーでも行くことができる。いろいろな意味でインパクトの大きい観光スポットだ。まず、約43メートルの金色に輝くムルガン神像に驚かされる。ウルトラマンに匹敵する大きさだ。その後ろには、岩山に向かって272段の階段が続いている。
カニクイザルがたむろする階段を登りきると、そこには洞窟の入り口がある。内部は広く、巨大なホールのようになっている。ヒンズー教の祠があり、あちらこちらに神像が祀られている。
毎年2月に行われるヒンズー教のお祭り「タイプーサム」の時には、多くの信者や観光客が訪れ、洞窟内は人でいっぱいになる。
タイプーサムでは、顔に串を刺したり、背中にかぎ針で捧げもののミルク壺をぶる下げたり、巨大な神輿のようなものをしょった修行者たちが、クアラルンプールにあるスリ・マハ・マリアマン寺院から歩いてバツーケーブを目指す。もともとヒンズー教の本場インドで行われていた祭りだが、危険なのですでに廃止されている。今では、マレーシアとシンガポールのみで行われている。
10、ロイヤルセランゴール・ピューター工場
ロイヤルセランゴール社は、1885年に創業したマレーシアの特産品である錫の加工品を扱うメーカーである。クアラルンプールの中心部から車で30分ほどの場所にあるが、予約すれば無料の送迎車がホテルまで迎えに来る。
工場内には、マレーシアにおける錫採掘の歴史や錫の加工に関する展示、実際の加工作業を見学できる場所がある。
ロイヤルセランゴールピューター工場を訪れたら、これをやらずには帰れない。平板な錫の円盤を木の型に合わせて木槌でたたき、小皿を製作する「ハードノック」体験だ。かなりしっかりと力を入れてたたかないと平板な円盤は、なかなか立体的な形にならず、最後の方では力の入れ加減もコントロールする必要がある。単純な作業に見えるが、なかなか奥が深く楽しめる。
お土産店もあり、様々な錫製品を購入することができる。なお、ロイヤルセランゴールの店舗は、クアラルンプール市内の主要なショッピングセンターにはだいたい入っている。ピューター製品はそちらでも購入することが可能だ。
≪後編で紹介するスポット≫
11、ジャランアロー
12,スカイバー
13,ヘリラウンジバー
14,パビリオン
15,スリアKLCC
16,セントラルマーケット
17,恭和堂
18,マダムクワン
19,コロシアムカフェ
20,チャウキット市場
トラベルガイド株式会社代表・ライター・カメラマン
阿部吾郎