洞窟寺院にお城の廃墟、グルメも充実「イポー」のディープな魅力

イポーへは、首都クアラルンプールからマレー鉄道に乗って2時間ほどで行ける。日帰りも可能だが、ホテルもたくさんあるので1泊2日で訪れるのもいいだろう。

イポーはペラ州の州都で、19世紀後半にキンタ渓谷で錫の鉱脈が発見され急速に発展し「億万長者の街」と呼ばれた。石灰岩の景勝地として知られており、洞窟が多く、霹靂洞(ペラトン)、三寶洞(サンポトン)など洞窟寺院が点在している。旧市街にはイポー鉄道駅を始め、歴史的建造物が多く残されている。食の都としても有名で、マレーシアやシンガポールなどで定番のチキンライス発祥の地と言われている。また、マレーシア国内では非常にポピュラーなホワイトコーヒーもこの地が発祥だ。きれいな地下水が豊富なことから、もやしの栽培も盛んで、独特の歯ごたえでやみつきなるうまさだ。

最近、ガイドブックにも載るようになり、少しずつ日本でも知られるようになってきたイポーだが、まだまだどんなところか知らない人も多いだろう。そんなイポーの主要観光スポットをご紹介しよう。

1、三寶洞(サンポトン)

三寶洞(サンポトン)の門

最初にご紹介するのは、イポーを代表する洞窟寺院「三寶洞(サンポトン)」だ。イポー市内から5kmほど南のグヌン・ラバにあり、路線バスかタクシーを利用する。19世紀後半に建立された中国式寺院だ。

三寶洞(サンポトン)の入口

三寶洞の入口。断崖絶壁にぽっかりと穴が空いている。

三寶洞(サンポトン) 洞窟寺院の内部

入口を入ると、すぐに少し広い空間があり、ここがお寺の中心部になっている。天井や壁はコンクリートで固められていいるものの、壁面はごつごととして不規則な凹凸がある。

洞窟寺院内の仏像

洞窟の壁面を直接くりぬき、装飾を施した祭壇の上に、金色の仏像が並ぶ。神秘的な光景だ。

三寶洞(サンポトン)のトンネル

洞窟はさらに奥につながっており、進んでいくとその先に光が見える。

三寶洞(サンポトン)

このトンネルを抜けると、四方を絶壁に囲まれた広場が出現する。このトンネル以外からは行くことができない閉ざされた空間だ。

三寶洞(サンポトン)の建築

広場の奥に建つ見事な中国風の寺院建築。資材は、どうやって運び入れたのだろうか。

三寶洞のハチドリ

三寶洞の周辺は自然も豊かでハチドリなども見られる。

三寶洞の周辺には他にも、岩仙霊、南天洞といった洞窟寺院がある。いずれも三寶洞ほどの規模ではないが、それぞれ個性があって面白い。時間があれば、立ち寄ってみるのもいいだろう。

2、霹靂洞(ペラトン)

霹靂洞(ペラトン)の門

霹靂洞(ペラトン)は、イポー市内から6kmほど北に進んだ場所にあり、20世紀前半に建立された中国式寺院で、イポーにある洞窟寺院の中では最大級である。

霹靂洞(ペラトン)の入口

赤い門の奥に、霹靂洞(ペラトン)の入口がある。単なる洞窟というよりも、鍾乳洞に近い感じだ。自然の岩に直接「霹靂洞」の文字が刻みこまれている。

霹靂洞(ペラトン)の巨大な如来像

入口を入ると、すぐに広い空間が広がり、その奥に12.8mの金色に輝く大仏が鎮座しており、両脇にはこれまた金色の四天王像がある。壁面には龍や天女など、様々な壁画が描かれている。大仏の向かって右横から、さらに洞窟が奥につながって行くのが見えている。

霹靂洞(ペラトン)の内部

進んで行くと、天上が低く、入り組んだ空間に出る。こちらも、壁面には壁画が描かれ、所々に仏像が祀られている。

霹靂洞(ペラトン)の千手観音像

少し奥まった場所に祭られていた、千手観音像。

霹靂洞(ペラトン)の上に向かって続く階段

洞窟は、上に向かって伸びている。石段をずっと登って行くと、岩の隙間から光が漏れてくる。登り切ると岩山の上に出られる。

3、ケリーズキャッスル

ケリーズキャッスル

ケリーズキャッスルと呼ばれているこの建物は、英国統治時代の1915年、ゴム園農園主のウイリアム・ケリー・スミスの邸宅として建築工事がスタートーした。インド文化に魅了されていたスミスは、資材はインドから輸入し、建築作業員もインドのマドラスから連れてきた。しかし、工事の途中、疫病のため建設作業員が次々と死亡し、このため近くに神を鎮めるための寺院を建立することとなり、これが完成するまで工事は一時中止された。第1次世界大戦がはじまり、工事はさらに遅れ、スミス自身もポルトガルのリスボンを旅行中に肺炎にかかり56歳で死亡した。結局、工事は中止され、邸宅は未完成のまま今に至っている。こうしたいきさつから、心霊スポットとしても有名である。2011年に公開された、日本の映画「セカンド・バージン」のロケ地としても知られている。

ケリーズキャッスル前に流れる川

ケリーズキャッスルの前には川が流れており、橋を渡って敷地内に入る。橋の入口のところで入場料を支払う。入場料は7リンギット(約200円)。

ケリーズキャッスルの外階段

階段を登って小高い丘の上に建つ建物へ。

ケリーズキャッスルの裏側

建物の裏側には廊下があり、1階と2階では異なる装飾が施されている。

ケリーズキャッスル 1階の廊下

ケリーズキャッスル 2階の廊下

上の写真が1階の廊下で、レンガがむき出しだが、下の写真の2階の廊下は漆喰で塗り固められている。

ケリーズキャッスル 内部の階段

内部の階段を使って、1階から2階、さらに屋上にあがることができる。

ケリーズキャッスル 2階の部屋

2階の一室。完成していたら、きれいな部屋になっていただろうと想像させられる。

ケリーズキャッスル 屋上

屋上には、2階の部屋の明り取りの窓が並んでいる。2階の部屋が一部せりあがったような構造になっているのだ。なかなか凝った建築である。柵が低いので落ちないように注意が必要だ。

ケリーズキャッスル 屋上からの眺め

建物を正面からみて左手にある塔の上から撮影した写真。周囲はパームヤシの森で囲まれている。これは、もともとの森林を伐採して植えられたものだ。パーム油は、マレーシアの主要輸出品のひとつとなっている。

ケリーズキャッスルへは、イポー市内から車で30分ほどかかる。

4、イポー駅周辺の歴史的建造物群

イポー駅

イポーの街は、南北に流れるキンタ川を境に東西に分かれており、西側が旧市街、東側が新市街となっている。西側の旧市街には、イポー駅を中心に、英国統治時代の20世紀前半に建てられたコロニアル様式の建築物が多く残されている。

イポー駅は、1893年に開業したマレー鉄道の駅で、現在の駅舎は1917年に建てられたものだ。駅舎の2階はマジェスティック・ステーションホテル・イポーとして営業している。

バーチ時計台

1909年に初代英国駐在官バーチの追悼碑として建てられた「バーチ時計台」。バーチは植民地解放運動のさなか暗殺された。

イポー シティーホール

イポー駅の正面にあるタウンホール。1916年に完成したネオクラシカル様式の建物だ。設計者はA.B.ハボックで、イポー駅もこの人が設計している。クアラルンプールにある有名な建造物のいくつかも、設計した人物だ。

海峡貿易会社

1907年完成の海峡貿易会社ビル。イタリアルネッサンス様式の建物。イポーで産出される錫の貿易で栄えた会社。

香港上海銀行

1931年完成の香港上海銀行。ネオルネッサンス様式の建築で、銀行の顧客に好印象を与えるために豪華な造りとなった。

FMSバー&レストラン

1906年開業の「FMSバー&レストラン」。海南島からの移民が創業した、FMS(マラヤ連邦)で最も古いレストラン。

5、 老黄芽菜鶏沙河粉

老黄芽菜鶏沙河粉

さて、ここからはグルメスポットをご紹介しよう。

イポーに来たら絶対に外せないグルメスポット「老黄(ローワン)」。

老黄芽菜鶏沙河粉 チキンライス

お店の看板に「TAUGE」「AYAM」と書かれている。この2つがこのお店の名物だ。まず上の写真はAYAMの方だ。AYAMはマレー語で鶏のこと。マレーシアやシンガポールなどで定番の海南チキンライスは、イポーが発祥と言われている。ネギ、パクチーが添えられ甘辛いタレのかかった蒸し鶏は絶品だ。鶏のだしで炊いたご飯と一緒に食べるとさらにうまい。

老黄芽菜鶏沙河粉 もやし タオゲー

こちらがTAUGEの方だ。イポーは、石灰岩で覆われたカルスト地形が広がる土地で、おしい水が豊富だ。このためもやしの栽培が盛んになった。たかがもやしと、あなどってはいけない。日本のもやしよりもふっくらしており、シャキシャキした食感が良く、もやし独特のにおいも少なく、病み付きになるうまさだ。

6、南風茶餐室

南風茶餐室 外観

海南チキンライスに加え、イポー発祥のものがもうひとつある。マレーシアのコーヒーは、通常砂糖とマーガリンを加えて焙煎するが、イポーでは少量のマーガリンのみで焙煎する。そのため、仕上がったコーヒー豆が白く「ホワイトコーヒー」と呼ばれている。「南風茶餐室」は、マレーシア全土に店舗を持つチェーン店「オールドタウンホワイトコーヒー」の本店である。

南風茶餐室 内部

オールドタウンホワイトコーヒーは、マレーシアではマクドナルドやケンタッキー以上にポピュラーなチェーン店なのだが、その本店にしては小さなお店だ。店内は、いつも混みあっている。

ホワイトコーヒー

その、わずかなマーガリンのみで焙煎した豆で淹れたコーヒーにたっぷりコンデンスミルクを入れたものを一般的に「ホワイトコーヒー」と呼んでいる。暑いマレーシアでは、しっかりと甘いものが好まれるのだ。

このお店のメニューは、アイスとホットのホワイトコーヒーのみだが、店の前にある別の屋台で売られている麺類やエッグタルトなどを店内で食べることができる。イポー駅から徒歩10分ほど。

7、富山茶楼

富山茶楼

「富山茶楼」は、イポーでもっとも有名な飲茶のお店だ。イポー駅から徒歩15分、タクシーなら5分ほどの場所だ。ワゴンで見本を運んで来てくれるので、簡単に指さし注文できる。

富山茶楼の飲茶

値段もリーズナブルで、1人20~30リンギット(600~900円)程度で、お腹いっぱい食べられる。もちろん、味も確かだ。

富山茶楼の料理

点心以外に、ご飯ものもある。

8、ポメロ屋台街

イポー ポメロ屋台街

最後に、イポーの名物をもうひとつご紹介しよう。イポー駅から車で15分ほどの、三寶洞の近くにポメロを売る店ばかりが十数軒連なる屋台街がある。

ポメロは、日本のザボンに似た大きなかんきつ類で、イポーのタンブン地区のものは高級品とされている。

イポー ポメロの販売店

ポメロは赤いネットに入れて吊り下げられており、これがなかなか絵になる。

ポメロ

ポメロは、ひとつ10リンギット(約300円)前後。あまりジューシーさはなく、サクサクした食感で甘い黄色っぽい果肉のものとピンクでやや酸味のある果肉のものがある。

まとめ

首都クアラルンプール、ペナンに次ぐマレーシア第3の都市「イポー」の主要スポットをご紹介してきたが、いかがだっただろうか?錫の採掘で栄えた、古き良き時代の雰囲気を残す町並みに、カルスト地形が生み出した洞窟寺院とイポーもやし。なかなかユニークな場所であることをご理解いただけたと思う。イポーやその周辺には、まだまだおもしろいスポットがたくさんあるので、またの機会にご紹介していきたいと思う。

 

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