シリーズ「ボルネオ島の平和な小国ブルネイ」の第2回目は、首都バンダル・スリ・ブガワンから日帰りで行ける国立公園「ウル・テンブロン」の様子をお伝えしよう。
ブルネイは国土が2つに分かれている。首都のある国土の主要部分とその北側にマレーシアのサラワク州に囲まれた飛び地部分がある。この飛び地はマングローブ林が広がる森林地帯で、ここにウル・テンブロン国立公園がある。陸路では、国境を行き来しないと行けないので、基本的に船を使ってアクセスする。
車や水上タクシー、ボートを乗り継いで行く必要があるため、個人でテンブロンまで行くのは困難なので、旅行会社のツアーを利用するのが基本だ。日本語ガイド付きのツアーもある。
テンブロンへ行くツアーは、いくつか種類があり、立ち寄る場所もそれぞれ違いがある。今回は、代表的なポイントをご紹介する。
今回の目的地は次の3つだ。
(1)キャノピーウォーク(2)レインフォレストの中にある小さな滝(3)イバン族のロングハウス
ツアーに参加する際、滑り止めの付いた靴、サンダル、水着、防水バック、非常食などを持ってくるように指示があるのだが、実際どの程度の装備で行けばいいのか判断に迷う。そのあたりも、しっかりお伝えして行こうと思うので、ツアー参加を予定している方、計画している方は是非参考にしていただきたい。
バンダル・スリブ・ガワンおよび周辺にあるホテルを朝の7時ごろに車で出発し、30分ぐらいで水上タクシーが発着するジェティーに到着する。大きな橋のたもとにある、小さなジェティーだ。上の写真の小さなボートが水上タクシーだ。ここから、このボートで45分かけてテンブロン地区のバンガーへ向かう。途中、このような小さなボートで行く理由がわかってくる。海から川に入り、蛇行する川筋を遡って行くのだ。注意して見ていると、テングザルなどの野生動物を見ることができるかもしれない。
テンブロン地区のバンガーに到着したら、ここからバスでレインフォレストロッジへ向かう。約30分かかる。
レインフォレストロッジは、テンブロン国立公園への足場となる施設で、宿泊も可能だ。到着すると、お茶とお菓子が用意されており、出発までしばらく休憩する。
レインフォレストロッジの横には吊橋がかかっている。吊橋で川の反対側に渡るとジップラインの出発点があり、ジップラインで川を越えてこちらに戻って来られる。今回は、体験しなかったがジップライン体験付きのツアーもある。
この土地の原住民であるイバン族のバンブーチキンとバンブーライス作りの様子を見せてくれる。竹筒に鶏肉とショウガなどのスパイス、お米とココナッツミルクを入れて火にかける。出来上がったものは、テンブロン国立公園から戻った後の昼食で出される。
いよいよボートに乗って、テンブロン国立公園に出発する。後で再びレインフォレストロッジに戻ってくるので、現地で使わない荷物はロッジに預けておくこともできる。
ボートは船頭を含めて7から8人乗りで、エンジンが付いている。
ボートは40分ほどかけて川を遡り、入園登録を行う国立公園センターへ向かう。途中、川の流れが速く、かなり水しぶきを被る場所もある。服や荷物はある程度濡れることを想定しておく必要がある。服は濡れてもすぐに乾くが、バックなどは防水タイプのものが望ましい。
国立公園センターで入園手続き後、再びボートに乗り5分ほどでキャノピーウォークの入口に到着する。キャノピーウォークから戻ると、同じ場所から同じボートに乗るので、不要な荷物は置いて行くことができる。ここから、キャノピーウォークまでは、かなり体力が必要なので、余計なものは持っていかない方がいい。サンダルは、ここでは必要ないので置いて行こう。
船着き場からしばらくは、ぬかるんだ山道を、設置されたロープにつかまりながら登って行く。靴は、どろどろになる。テンブロン以外の行程で履く靴とは別のものを用意しておいた方がいい。登山靴でなくても大丈夫だが、滑りにくく動きやすいものを用意する必要がある。
途中からはボードウォークが整備されており、歩きやすくなる。ただし、階段が長い。このボードウォークの階段と、キャノピーウォークの鉄塔の階段を合わせると1000段を登る必要がある。森の中なので、比較的涼しいが、ここは熱帯である。熱中症に注意して、水分補給もしっかり行う必要がある。
ようやく、キャノピーウォークの下にたどり着いた。工事用の足場のような感じだ。右側に写っている脚を1区画ずつ梯子のような階段で登って行く。
最初の鉄塔を登り切るとようやくキャノピーウォークに到達するが、少し行くとさらに登りの鉄塔がある。
さらに進むと、また登りの鉄塔がある。上の写真で人が立っているところが、このキャノピーウォークの最上部である。
こちらが最上部からの眺めだ。熱帯雨林の一番高い木よりさらに上に出ることができるので森全体を見渡すことができる。マレーシアなどでよく見られるキャノピーウォークは、木々の間を渡る吊橋形式のものが多く、橋を渡ること自体が目的のものが多いが、ここのキャノピーウォークは、この最上部の展望台に到達することを目的としており、橋自体はそれほど長くはない。
360度森を見渡すことができる。普通では目にすることができない光景なので、苦労して登るだけの価値はあると言えるだろう。
行きは3段階に分け登ってきた鉄塔を、今度は一気に下まで降りていく。上りよりは楽だが、帰りも結構大変だ。それから、船着き場まで来た道を戻って行く。
キャノピーウォーク入口の船着き場から、また5分ほど船に乗って別の入口へ。今度は、浅い川の中を歩いて行く。船着き場で、くつを脱ぎサンダルに履き替えていく。サンダルと言っても、ビーチサンダルのような底が浅く脱げやすいものだと足を痛めてしまう可能性がある。底が厚く、かかと部分にベルトや紐が付いたタイプのものがいいだろう。
途中、ロープをつたって岩場を登る場所もある。
船着き場から10分程度で、この小さいが美しい滝に到着する。
滝つぼで泳ぐこともできる。着替える場所は無いので、レインフォレストロッジで水着を着用してくる必要がある。ドクターフィッシュのような魚がいて体をつついてくるので、少々くすぐったい。
この後、船着き場に戻り、また40分ほどかけてボートでレインフォレストロッジに戻る。
レインフォレストロッジに戻りランチタイム。出発前に調理の様子を見たバンブーライスとチキンが仕上がっている。ライスは、竹を割り中身を取り出したら、はさみで切って行く。チキンの方は、既にお鍋に移されていた。
バンブーライスは、もちもちとした食感でココナッツミルクの風味がしてとてもおいしい。チキンは、素朴な塩味にショウガやスパイスが効いてさっぱりしている。汗をかいて塩分が不足した体に沁みる味だ。
他にもおかずが用意されているので、ゆっくり昼食をとって疲れをいやそう。
昼食終了後、バンガーの船着き場に行く前に、この地の原住民であるイバン族のロングハウスに立ち寄った。
ロングハウスの長いテラスと、集会などに利用される共用部分。ピンク色のドアの向こうに、同居する5つの家族の住まいがある。親戚同士が集まってひとつのロングハウスに住んでいる。
部屋の中も見せていただいた。イバン族は、もともと自然崇拝を行っていたが、今ではイスラム教に改宗している家庭が多い。壁には、ブルネイ王族の写真が飾られていた。
部屋にはテレビやクーラーもあった。元々は、首狩り族であったイバン族も、その生活はかなり現代的になっていることが分かる。
ビーズでイバン族の伝統的な模様を使ったお土産品を作っていた。
最初は、ドアの隙間からそっと私たちの様子を見ていた子供たちも、最後には部屋から出てきてくれた。
この後、水上タクシーと車を乗り継いで、ようやくホテルにたどり着いたのは18時ごろであった。
テンブロンへのツアーは、日帰りの他、レインフォレストロッジで1泊するものもあり、こちらはだいぶゆったりとした日程でテンブロンを満喫できる。体力に自信のない方は、キャノピーウォークに行かない楽な行程のコースもある。
最後に、服装や持ち物についてまとめておこう。まず、服装は当然動きやすいものがいいが、キャノピーウォークに行く際は虫もいるし、転倒の危険もあるので長ズボンの方がいいだろう。滝で泳ぐなら、予め水着着用でで、その上にズボンやシャツを着用して行こう。レインフォレストロッジで着替えることもできる。靴は、滑りにくいしっかりとしたもので、どろどろになっても大丈夫なものを履いて行こう。また、底の厚い、かかとにベルトや紐が付いたタイプのサンダルも用意しよう。非常食が必要になるような事態はあまり考えられないが、心配であれば、カロリーメイトのようなかさばらないものを持って行こう。チョコレートは、溶けてべとべとになるので、あまりお勧めできない。それより重要なのは水である。レインフォレストロッジでは飲み物が用意されているが、売店などはないので、水は持って行くようにしよう。
レインフォレストロッジ、ボートと、荷物を置いて行けるポイントが2つあるので、それを想定して荷物を分けておくのもいいだろう。ボートに荷物を置いて行く場合、雨が降れば濡れるので注意が必要だ。
なかなか他ではできない体験ができる、ウル・テンブロン国立公園、ブルネイを訪れる機会があれば、是非訪れていただきたい。
シリーズ「ボルネオ島の平和な小国ブルネイ」
1、美しい2つのモスク
2、ウル・テンブロン国立公園で上から眺める熱帯雨林
3、マングローブ・リバー・サファリと水上集落見学
4、超豪華5つ星!ザ・エンパイヤホテル&カントリークラブ
5、バンダルスリブガワンのおすすめシティーホテル3選
6、ブルネイグルメをご紹介します
7、ブルネイのみどころ&ショッピングスポット
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